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2008年12月 3日 (水)

タイの政情不安

タイで議会で多数派を占めるタクシン派と、それに抗議する野党(反タクシン派)との衝突が、大きな問題を引き起こしている。特に反タクシン派による空港占拠という暴挙は、国際社会のタイに対する評価を著しく低下させたに違いない。

今後のタイ経済の停滞も危惧されるが、それ以上に危惧することは、タイ政治の構造的変革が必ずしも民主主義的な手法で行われていないという点である。民衆運動がかならずしも民主主義の原則と合致していないことは説明するまでもない。民衆の主張がすべて正しいはずもなく、時として極度に利権に関わる要求すらあり、その正当性は低いからである。

特に今回、憲法裁判所の判断でタクシン派の政治的権利を喪失させるという手段を用いたことは、民主主義の根幹を成す三権分立と、司法の中立性というものを「乱用」したと考えられ、今後のタイ政治の民主主義的運営に多大な禍根を残した。

新聞などによれば、「タイ式民主主義」などというののだそうが、権力闘争が行われている際に、その一方の主張を丸呑みしたような判断を下す裁判所に、誰が信任を置き続けるのだろうか。今後、タクシン派が再度権力を握り、憲法裁判所の判事を改めて自派サイドの判断を下す判事を任命するようになれば、その後は現在の反タクシン派にとって都合の悪い司法判断が下されるようになる。「高度に政治的な判断」は、司法は避けるべきであり、既存の法体系の下で既存の法解釈の中で粛々と判断を下すことを司法は求められているのである。

タイの政治は、今後、さらに混乱することであろう。アジアの中で安定していると考えられていたタイが、政情不安になることは、日本やアジア諸国、さらにはアメリカなどの世界中の諸国の利益にならないだけでなく、タイの国民の利益を損ねることである。不満は既存の体制とシステムを利用することで表出するべきであり、強行な手段は、民主主義の原則を損なうものだ。

失われた信頼を取り戻すことは用意ではないことは、日本の麻生政権に対する支持率を見れば明白だ。麻生政権は崩壊すれば、次の政権が成立するだけだが、タイという国家では、自らが再生しなければならない。今回、国際社会に与えた不信を取り除くことは、容易なことではない、ということをタイの民衆は、特に空港を占拠した暴徒は理解すべきである。

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